当院は、ご病気・怪我などに由来する身体的弱者のみならず、それ故に社会的弱者となった方を多く受け入れている病院です。透析患者さんや呼吸器装着の患者さんもそうですし、認知症はもとより、高齢である事自体が潜在的な弱者になる可能性を高めます(注:同年齢での高齢者であっても、個々人で健康の状況が異なります。高齢=弱者(エイジジム)ではありません)。
 しかし、昨今の国の財政難の中、医療費は相対的に圧縮され、増税と共に自己負担額も増える傾向にあります。自分自身含め、何人であれ突然の病気・事故・社会情勢の変化により、短期間で弱者になり得ますので、他人事ではありません。
 1998年にアジア人で初めてノーベル経済学賞を受賞した、アルマティア・センは、機能と潜在能力を基準として、衡平な社会をつくるべきだと主張します。衡平とは公平とは異なり、バランス(釣り合い)がとれているということです。センは貧困(弱者)に対して教育や福祉・医療などの援助が必要だが、前提として自由で民主的な社会のなかで、戦略的に効率的な市場の形成を行うべきだと述べました。
 当院では、病状・ADL・社会的背景を理由として、医療の密度を機械的に変えることは致しません。患者さん個々人によって異なる信念・価値観・死生観を尊重し、医学・心理・社会モデルに基づき、医療者と、患者さんや患者さんを支える方との対話を通して医療を組み立てていきます。
 今後、当院ではリハビリテーション医療に注力したいと考えております。身体および精神機能の維持・回復を図り、潜在的な能力を発揮してもらうということにより、家庭を含む社会の中でその患者さんの活躍する場を作り、社会的損失を最小にし、衡平を実現する。それが我々の目指している医療ではないかと考えます。この考え方は、地域包括ケアの概念につながっていきます。
 

2017年6月